大気環境学会誌
Online ISSN : 2185-4335
Print ISSN : 1341-4178
ISSN-L : 1341-4178
最新号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
総説
  • 谷本 浩志, 藤縄 環, 池田 恒平, 杉田 考史, 猪俣 敏, Müller Astrid
    2025 年 60 巻 3 号 p. 21-30
    発行日: 2025/04/09
    公開日: 2025/04/09
    ジャーナル フリー

    宇宙からの地球観測データは今や一般市民にも馴染み深く、天気予報や台風の進路予測など日々の市民生活に大きく役立っている。しかしながら、大気組成成分の衛星観測、つまり大気中に存在する化学物質を宇宙から観測することは、大気汚染や気候変動の監視に役立ち、それにより地球環境保全に貢献している、と理解していても、それがどのような仕組みで人類に有益化かを体系的に理解している人はおそらく少ない。これは、地球環境問題においては、衛星データが生活の利便性と直接は結びつかず、まずは政策を介しているからである。そこで本稿では、オゾンやPM2.5の生成のもととなる窒素酸化物の衛星観測を中心に、大気汚染の観測における衛星観測と地上観測の相補性を議論し、日本が2025年度に打ち上げる予定のGOSAT-GW(Global Observing SATellite for Greenhouse gases and Water cycle)衛星にも触れ、最新の衛星観測が大気汚染の環境政策に果たせる独自の役割を述べる。

研究論文(原著論文)
  • 國分 優孝, 橳島 智恵子, 星 純也, 今村 隆史, 茶谷 聡
    2025 年 60 巻 3 号 p. 31-46
    発行日: 2025/04/09
    公開日: 2025/04/09
    ジャーナル フリー

    領域化学輸送モデルCMAQの大気質シミュレーションが抱える主な不確実性要因として、その入力値である排出インベントリの不確実性が指摘されている。本研究では排出インベントリを用いない大気質シミュレーション手法により、CMAQの不確実性の解明に有用な知見を得ることを目的とした。東京区内の実測VOC大気濃度を用いて、大気質のボックスモデルシミュレーションを行ったところ、オゾン濃度の再現性は良好であり、不確実性の要因分析に有用なモデルと示唆された。そしてボックスモデルによるオゾン濃度の再現結果から、CMAQのオゾン濃度過大評価に対しては、バックグラウンド地域のオゾン濃度の再現精度が影響要因と考えられた。また東京区内の地点のVOC排出量を推定したところ、CMAQによるVOC大気濃度の過小評価に対しては、排出インベントリにおける芳香族を除くVOCの過小評価が示唆された。東京区内の地点において、高濃度オゾンに対する各VOCの寄与を解析したところ、ホルムアルデヒドが顕著な寄与を示し、そのホルムアルデヒドの発生には直接排出と二次生成が同程度の寄与を持つと推定された。ホルムアルデヒドの二次生成に寄与が大きいVOCを探索し、さらにホルムアルデヒドの削減効果を推定したところ、一定のオゾン低減が認められた。こうした結果から、高濃度オゾンを回避する上で、ホルムアルデヒド原因物質の削減が重要であると示された。

研究論文(ノート)
  • 大貫 文, 大久保 智子, 五十嵐 剛, 森内 裕香, 角田 徳子, 菱木 麻佑, 小林 乗時, 牧 倫郎, 高橋 佳代子, 木下 輝昭, ...
    2025 年 60 巻 3 号 p. 47-53
    発行日: 2025/04/09
    公開日: 2025/04/09
    ジャーナル フリー

    2022年8月から2023年8月までの1年間、都内1か所における大気PM2.5中硫酸アンモニウム及び硫酸水素アンモニウム濃度の実態調査を実施した。1週間採取を52週間、連続して実施した結果、硫酸アンモニウムの検出率は100%、年平均濃度及び最大濃度は1.2 µg/m3及び3.8 µg/m3であった。年間の濃度推移は、3月から8月の春季及び夏季に濃度が高く、9月から2月の秋季及び冬季に低くなる傾向が見られた。硫酸水素アンモニウムについては、検出率が約27%、平均検出濃度が0.6 µg/m3で、検出時期は4月から8月であった。両物質濃度について、大気汚染物質濃度との関連を解析した結果、Ox濃度との相関が比較的高く、特に硫酸水素アンモニウムは、Ox濃度週最大値が環境基準値を超えると、より高濃度になる可能性が示唆された。また、硫酸アンモニウム及び硫酸水素アンモニウムは、越境汚染による影響が懸念されているため、黄砂との関連についても調査した。測定期間中に黄砂が飛来したと推測されたのは2023年3月から5月の計5測定回で、ほとんどの場合、両物質濃度は年平均濃度または夏季平均濃度と同程度であった。

feedback
Top