複雑地形上の地上風速を低コストで迅速に把握・予測する新たな風速予測手法として、メソ気象モデルから得られた風速値を入力値とした深層学習モデルが考えられる。本研究では山間部の複雑地形の4地点を対象に水平方向解像度300 mでメソ気象モデルWRFを実行し、地上高約10 mの風速の水平方向2成分を取得する。WRFから得られた風速2成分(31.5 km四方)を入力値とし、野外観測値の風速2成分を教師データとして、深層学習モデルを構築する。奇数月の6ヶ月を学習データとし、偶数月の6ヶ月をテストデータとした結果、いずれの地点においても、本畳み込みニューラルネットワーク(CNN)モデルで推定されたスカラ風速はWRFから得られたスカラ風速よりも小さな誤差となることが明らかになった。また、WRFでは再現が難しい風向に対しても、本CNNモデルを適用することにより再現することが可能である。さらに、より短い期間の1ヶ月の学習期間でCNNモデルを構築した結果、いずれの地点においても多少の再現精度の差はあるものの、季節の変化に関わらず残りの期間の風速をWRFから得られた値よりも高精度で再現できることが明らかになった。ただし、風向・風速分布が幅広い月のデータを学習データとして使用したCNNモデルの方が高精度で風向・風速を推定することができる。