2010 年 45 巻 6 号 p. 289-292
近傍の汚染源の影響が小さい九州福江島大気環境観測施設においてPM2.5質量濃度を連続測定し、大気環境基準が設定された2009年9月9日からの1年間にわたるデータを解析した。年平均値は17.3 μg m-3であり、欠測の期間の値やゼロ点の不確かさを考慮すると長期基準(年平均値15 μg m-3)を有意に超過しているとは結論されなかったが、日平均値の年間98パーセンタイル値を日平均値の代表値として選択し評価を行う短期基準では観測値(56.5 μg m-3)が基準値(35 μg m-3)を大きく上回り、環境基準非達成であることが明らかとなった。高濃度日の後方流跡線解析から、韓国~中国華北平原北部~華中付近から大陸を離れ福江島に気塊が到達するケースが多いことが示された。長崎で黄砂の影響が確認された日の前後に含まれない高濃度日も多く、また高濃度日にはブラックカーボン濃度も高濃度で検出されたことから、大気汚染の影響も強いことが示唆された。