2017 年 52 巻 2 号 p. 51-58
都心上空での大気質を把握するため、東京スカイツリー(TST)で上空の大気質の定点観測を行ってきた。その中で、2015年12月9~10日には地上で高濃度のPM2.5が観測された。この事例に着目し、地上・上空の各種汚染物質の濃度変動から、都心域での地上–上空間における大気質の挙動差、PM2.5の高濃度要因を解析した。9日午後の東京スカイツリー高度320m (H320)で地上より高い二酸化硫黄(SO2)濃度が観測された。これは9日18時ごろから境界層が形成され、H320は南風により大規模固定煙源や船舶の影響を受け続けたためと思われる。都心付近で微小粒子状物質(PM2.5)濃度が90 μg/m3を越えた10日夜は、いわゆる房総前線に伴う逆転層の形成が高濃度の原因と考えられた。この高濃度域は東京23区南東部が中心で、高濃度汚染気塊の高さは22~23時で200m程度と推定された。また、両日午前中のH320と地上(H10)の粒子数濃度比(NH320/NH10)は、粒径が小さいほど早く増加を始める傾向があった。