日本オペレーションズ・リサーチ学会和文論文誌
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複数資産にインプライド分布を用いた最適資産配分モデル
霧生 拓也枇々木 規雄
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2014 年 57 巻 p. 112-134

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抄録

近年,オプション価格から導出可能な原資産価格に対する確率分布であるインプライド分布を用いて資産配分を行うことが研究され,ヒストリカル分布を用いて資産配分を行う場合に比べて運用パフォーマンスが向上することが複数の先行研究により示されている.しかし,実務において資産配分にインプライド分布を用いる上で重要な問題である,(1)インプライド分布のリスク調整が与える影響,(2)満期依存性を解消し複数資産にインプライド分布を適用することの影響,の2点について先行研究では十分に検証されておらず,未だ実務では伝統的なヒストリカル分布を用いた分布推定方法が主流となっている.そこで本研究ではこの2点の問題について検証を行う.バックテストの結果から,既存のヒストリカルデータを用いた方法によるリスク調整は運用パフォーマンスを低下させてしまうことを明らかにした.また,薄板スプライン平滑化を用いてインプライド分布の満期依存性を解消する方法を提案し,既存の方法と運用パフォーマンスを比較した.さらに,インプライド分布への適用資産の組み合わせを変えて運用パフォーマンスを比較した.満期依存性を解消し,複数資産にインプライド分布を用いることで,運用パフォーマンスが向上することを示した.

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© 2014 日本オペレーションズ・リサーチ学会
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