2011 年 28 巻 2 号 p. 113-122
1.野外調査と文献からキノクニスゲの分布と生態,特に島嶼部の照葉樹林の林床に多いことを証明するとともに,その理由を考察した.
2.日本における分布図を作成するとともに,生育地の島の数と島の面積の関係を示した.
3.キノクニスゲの生育している森林群落の植生単位を明らかにした.
4.浮遊実験や野外における散布の観察から,本種はアリ散布型であることを明らかにした.5.キノクニスゲはかつては沿岸部のタブ型照葉樹林の林床に広く分布していたが,人為の影響で消失し,現在は小さな島嶼部に遺存しているものと考えられる.