美術教育学:美術科教育学会誌
Online ISSN : 2424-2497
Print ISSN : 0917-771X
ISSN-L : 0917-771X
制作過程とはどのような経験か : 美術教育の可能性
上西 知子
著者情報
ジャーナル フリー

2007 年 28 巻 p. 39-50

詳細
抄録

本稿は,美術制作過程がどのように自己理解につながるかをリクールの「ミメーシスの循環論」,メルロ=ポンティの「スタイル論」,ワロンの「発達」理論に学びながら検討する。美術制作過程は「『内的他者』との対話」と捉えることができ,その中で身体行為が作品を作り,作品の「スタイル」から意味を引き出し自己理解につながる過程と考えられる。この構造は制作過程について語る制作者自身の「語り」の中に「3人の私」という形で表れることに注目し,身体的行為から始まる美術制作は,制作過程そのものが精神的自己理解を獲得可能とする,より広範な教育過程につながることを明らかにする。

著者関連情報
© 2007 美術科教育学会
前の記事 次の記事
feedback
Top