抄録
本論文は,アメリカの美術大学であるロードアイランドデザイン大学における韓国人留学生の急増に関するケーススタディである。多文化主義に基づいた美術教育が,留学生の芸術家としてのアイデンティティ形成にどのように関与しているのかを調査している。フィールドワークとインタビュー調査の結果,韓国人は「シャイ」で「相互依存的」な存在であると見られ,それが文化の交流を疎外していると考えられており,その一方で教職員間での韓国文化に対する関心は非常に低い,という分析結果が出た。このような状況で,韓国人留学生は自立した美術家という自覚と文化的出自の狭間で複雑にアイデンティティを形成している。