2015 年 36 巻 p. 43-56
本稿は,アートプロジェクトによる学びの有効性について考察することを目的としたものである。アートプロジェクトの現場では,鑑賞者が制作のプロセスに参加することによって,一人ひとりが創造的な主体性を獲得していく事例を見ることも少なくない。ここでは,完成された作品を視覚的に鑑賞することとは異なる新たな美的体験が生み出されている。本論では,参加型芸術の理論的な背景を明らかにするとともに,アートプロジェクト《放課後の学校クラブ》の運営を通して実践研究を行った。現代美術家の北澤潤によって構想されたこのプロジェクトでは,子どもが主人公になる「もうひとつの学校」がつくられていく。その結果として出現する場は,アートによる開かれた学びの可能性を提示する。