動物遺伝育種研究
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原著論文
受精卵クローン作出技術を活用した種雄牛造成効率化のための胚DNA型判定方法の検討
今井 佳積尾形 康弘松井 茉由日高 健雅平野 貴松重 忠美
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2013 年 41 巻 2 号 p. 67-75

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抄録

現在、広島県の種雄牛造成では受精卵クローン作出技術を活用した「クローン検定」を導入している。本試験では、優良形質を導くDNA型を数多く保有する候補種雄牛の出生前選抜を可能にし、効率的な候補牛生産と精度の高い検定を行うために、検定牛用に生産されるクローン胚を用いた出生前胚DNA診断技術の確立を試みた。診断対象の遺伝子には、CL-16(タイプ1欠損)と脂肪酸組成関連遺伝子3種(SCD,FASN,SREBP-1)のうちの親牛のDNA型がヘテロであるSREBP-1を用いた。候補種雄牛となる体外受精胚は、広島県立総合技術研究所畜産技術センター繋養の供卵牛から経腟採卵して得た卵子と広島県供用種雄牛精液を用いて作出した。5日齢の桑実胚で細胞剥離を行い、得られた細胞をドナーとして核移植胚を作出し、核移植後5から6日目で32細胞期に達していない発育不良胚をDNA型判定用サンプルとして用いた。そこで得られたSREBP-1CL-16のDNA型は、細胞剥離後正常に発育し、受胎および出生に至った元の胚の出生後診断によるDNA型と一致した。このことから、DNA型の出生前診断が可能であることが示され、核移植技術と胚DNA診断技術を用いることにより、候補種雄牛の遺伝情報を出生前に獲得し、目的形質の優良DNA型を保有する種雄牛の効率的な選抜が可能であると考えた。

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© 2013 日本動物遺伝育種学会
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