動物遺伝育種研究
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筋肉内特異的脂肪蓄積の遺伝的解析に有用なラットモデルの検出
梅津 陽介田之村 秀樹三宅 武谷口 幸雄眞鍋 昇山田 宜永佐々木 義之
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2001 年 29 巻 1 号 p. 3-10

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抄録
ウシにおける筋肉内への特異的な脂肪蓄積の形質発現には遺伝的要因が関与していると明らかにされているが、その原因となる遺伝子の同定はなされていない。筋肉内特異的脂肪蓄積は量的形質と考えられ、このような形質に関与する原因遺伝子を究明していくためには、量的形質遺伝子の解析に有川である近交系ラットから筋肉内特異的脂肪蓄積の遺伝的解析モデルを検出し、そのラットモデルを用いて、量的形質遺伝子座 (QTL) ・コンジェニック解析、さらにはポジショナルキャンディデートアプローチを進めていく戦略が考えられる。本研究では、肥満を呈することが知られている10系統の近交系ラットの雌雄において、25週齢時での筋肉内、腹腔内および皮下脂肪量を測定することで、それらの系統のなかで腹腔内や皮下脂肪組織に比べ筋肉内脂肪組織への蓄積脂肪量がより多くなっている系統を調査することを行った。これらの肥満ラットでは筋肉内への脂肪蓄積が増加しており、とりわけfatty (fa) 突然変異をもつ系統は顕著な増加を示した。OLETF系統では筋肉内脂肪蓄積能に性差が認められた。Zucker fatty、LEAおよびSHC系統は雌雄ともに、腹腔内あるいは皮下脂肪量を基準とした時、他系統に比べて筋肉内脂肪量の程度が高くなっていた。こうして、これら3系統は筋肉内特異的脂肪蓄積の遺伝的解析に適したラットモデルとして有用であると考えられた。また、血中トリグリセリド量と脂肪量との有意な相関により、血中トリグリセリド量は生体のまま脂肪量を予測する指標になりうると考えられた。
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© 日本動物遺伝育種学会
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