動物遺伝育種研究
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遺伝資源保存を目的とした体細胞クローン用ドナー細胞銀行の構築に向けた屠場由来組織の収集保存
藤田 達男志村 英明梅木 英伸久々宮 公二志賀 一穂
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2003 年 31 巻 1 号 p. 3-11

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抄録

体細胞クローン技術による子牛生産が技術的に可能となったことから、多様で優れた経済的形質を持つ牛の体細胞を遺伝資源として豊富に確保しておくことは戦略的に重要と考えた。屠場出荷牛から細胞を採取することが効率的と考え、枝肉格付けされるまでの一時的保存方法と半永久的に保存する方法を検討した。大動脈組織、咬筋組織を用いてリン酸緩衝食塩水 (PBS-) を基礎液とした一時保存液の組成を検討した結果、10%子牛血清と0.01%塩化カルシウムを添加した保存液で最も細胞の増殖が良く、8日間の保存が可能であった。この場合、組織を細切するよりも塊のまま保存したほうが細胞の増殖は良かった。組織のまま半永久的に保存する方法として、25%エチレングリコールと25%グリセロールを添加したガラス化液と牛精液保存用0.5mlストローを用いた組織ガラス化保存法を開発した。本法でガラス化保存された組織からも細胞はよく増殖した。次に、枝肉格付けを終えた屠殺後3~4日目の冷屠体から採取した腎臓組織について、直ちに培養した場合とガラス化保存したものを培養した結果、いずれからも細胞増殖がみられた。ガラス化保存した大動脈組織、咬筋組織および腎臓組織から増殖した細胞をドナー細胞として核移植を行った結果、いずれの細胞からも体細胞クローン胚が作出された。著者らは、屠場において優れた経済的形質を持つ黒毛和牛の組織を採取し、血統情報、産肉成績とあわせて体細胞クローン用ドナー細胞銀行の構築を進めている。

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