動物遺伝育種研究
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野生哺乳類、特にネズミ類の遺伝学
鈴木 仁
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2005 年 33 巻 1-2 号 p. 39-46

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抄録

日本列島には特筆すべき野生の哺乳類が多い。例えば、琉球列島のトゲネズミはY染色体の一部がX染色体に転座したX0型で、性決定機構の解明に有益である。伊豆諸島を含め日本全国に生息するアカネズミはロバートソニアン型変異や数十万年間の隔離のゲノムへの影響を検討できる逸材である。ニホンヤマネは数百万年前に分岐が始まった複数の地域集団を持つ。これらの野生哺乳類は第四紀の地球環境の変動や陸橋形成などの日本列島の地史を知る上で有益情報をもたらすであろう。ハツカネズミやクマネズミの遺伝子を解析すると、数回の移入の歴史が観察された。数千年前から現在にかけての列島人類史解明への貢献が期待されている。また、豊かな毛色変異があるテン類 (イタチ科) はMCIR遺伝子に高頻度のアミノ酸置換を伴う変異が観察された。機能遺伝子の変化の究極的意味を知る上でもこのような野生生物の研究は重要である。以上のように野生の哺乳類をみるだけでも、日本列島は遺伝学的研究にとって資源の宝庫といえるだろう。

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