経営学はその成立以来,必ずしも営利企業における経営だけを研究対象としてきたわけではないが,20世紀,とりわけ第2次大戦後の資本主義経済の急激な拡大成長,そしてその主役とも言える巨大企業の経営に多大なコミットをしてきたことも事実である。現在の日本においても,全体で300兆円を超える内部留保(利益剰余金)を有する企業群は,グローバル市場の中で企業規模を拡大・成長させることをねらっている。しかしながら,世界経済の歴史においては,戦後の高度経済成長は,かなりの人口増加率を伴った例外的な現象とも言えるものである。少なくとも,これから数十年間,日本社会は急激な少子高齢化を伴う人口減少に直面する。そのような状況において,戦後の高度成長期の企業経営をモデルとした経営学は,その有効性を失うことが予想される。これをうけて,経済成長を前提としない経営学─脱成長の経営学─の構想が示唆される。