「社会の中での組織の機能」を問うには,社会や組織という概念の原点回帰が必要になろう。統一論題報告では,この原点回帰に取り組んできた制度派組織論の論争を振り返り,社会的事物として制度化された組織(制度としての組織)と,社会的環境である制度ロジックスの組織化が意味する理論的含意を再検討した。往々に人々を一意に規定する拘束的存在として捉えられがちな制度は,本来,多様な物質的実践を産出する超越的な言語であり,理念型とも呼ばれてきた。そうした制度は,矛盾を含んだ多元的な社会的価値(制度ロジックス)として存在しており,その中でも有機体として存続を求める価値を有する組織は,矛盾する価値を混合することで二律背反する多様な実践を産出してきた。社会の中での組織の機能は,いずれかの制度ロジックを色濃く反映した道徳的制度の機能として論じられる。例えば,経営戦略論,技術経営論,そして制度派組織論ではアイロニカルに使われた企業家研究もまた,独自の概念(用語)の価値に寄り添うことが理論的なアイデンティとなる。