經營學論集
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第89集 日本的経営の現在─日本的経営の何を残し,何を変えるか─
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サブテーマ② 日本的経営の何を残し,何を変えるのか?
日本の人事労務管理の変容
──競争民主主義的労働者支配から自己責任とフレキシブル化の労働者支配へ──
*黒田 兼一
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p. 47-56

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抄録

本論文は「日本的経営」の現在を人事労務管理の面から考察する。人事労務管理を,労働者の動員システム,「合意」形成システム,労働者の支配システムとして,その現状を問う。敗戦直後からの混乱を経て,日本の人事労務管理は,日本の労働者の意識と感情を管理のなかに取り込んだ「ヒト基準」の「動員システム」であった。一般に「終身雇用と年功制」と理解されているが,各人の「能力」を「平等」に扱い,その能力を相互に発揮させる「競争民主主義的」な支配システムであった。ところがバブル崩壊以降から現在まで続く人事労務管理「改革」は,その「ヒト基準」の特徴を削ぎ落とすものである。「仕事基準」を基本とした「自己責任とフレキシブル化」の支配システムといえる。だが,それは安定的に機能していない。雇用形態にかかわらず「従業員として正当に公平に扱う」ことが極度に後退しているからである。森岡孝二が指摘した「雇用身分社会」の雇用と処遇をめぐる「動員システム」を「ヒト基準」からどのように立て直すか。これからの重要な課題である。

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© 2019 日本経営学会
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