「改善」主義への疑問=「かんばん」のない場合の「改善」運用問題
中小製造業企業経営において,「作業改善」活動のみがもちこまれてしまうと人員削減や事業そのものの廃業・転業などの問題を招くことが地元企業経営者やコンサルタントから指摘されてきた。すなわち量販量産の必要性がない場合や受注が「平準化」されていない場合,現場改善した中小企業は,少量の注文を効率的にこなすだけの「縮小均衡」に陥ると指摘されてきた。
本論文では,こうした状況について,想定事例に基づき算術的に検討する。すなわち,現場「改善」の生じる利益は,新規事業開拓がされない場合,人件費の削減分として得られることを示す。その結果,「改善」は経営者には「利益」をもたすが,従業員には事業縮小と人員削減という不利益をもたらすことを指摘する。企業全体が事業を存続させ相互的な利益を得るには,経営側には「平準化」された注文を開拓できる製造体制づくりが必要となる。最後に,そのための改革・戦略の方向性について検討し提示する。
抄録全体を表示