企業におけるワークルールの知識普及や遵守については,少なくとも経営学分野からの検討は十分行われてこなかった。本稿では,企業におけるワークルールの知識普及がこれまでどのように行われ,どういった問題があったかについて述べる。これに対して,企業に対するインセンティブとなりうるものとして労務監査・労働条件審査があるが,その広がりに寄与していると思われる「公契約条例」の歴史や意味,役割,さらにはその前提となる ILO第 94号条約の意義について論じる。そして,企業におけるワークルールの知識普及や遵守に対して,公契約条例および労務監査・労働条件審査がどのように関わり,そこにどのような意義や問題点があるか,そして今後どのような方向性が考えられるかについて考察する。