日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌
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LCA手法を用いたメタン発酵施設によるふん尿処理・利用方式の環境影響の評価 : 堆肥化・液肥化処理との比較
菱沼 竜男栗島 英明楊 翠芬玄地 裕
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2008 年 44 巻 1 号 p. 7-20

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抄録

メタン発酵施設の利用に伴う環境影響を評価するために、メタン発酵施設、堆肥舎や液肥化施設を利用した場合の異なるふん尿処理・利用方式についてLCA手法を用いた環境影響評価(地球温暖化と酸性化の影響)を行った。調査対象としたふん尿処理・利用方式は、堆肥舎(堆肥化方式)、堆肥舎+液肥化施設(固液分離方式)およびメタン発酵施設の3シナリオとし、施設利用事例や設計値などのデータから処理施設や散布車両などのプロセスモデルを設定した。調査範囲は、施設の導入段階、処理段階および散布段階とし、機能単位を1年間で排泄される乳牛100頭(成牛)分のふん尿を処理し、圃場還元すると設定した。結果として、温室効果ガス排出量は、堆肥化方式で346t-CO_2eq/年、固液分離方式で625 t-CO_2eq/年、メタン発酵施設で86-90 t-CO_2eq/年であった。メタン発酵施設利用では、堆肥化方式や固液分離方式を利用した場合に比べて温室効果ガス排出量を75-80%低減できると考えられた。酸性化ガス排出量は、堆肥化方式で10t-SO_2eq/年、固液分離方式で18t-SO_2eq/年、メタン発酵施設で13-24t-SO_2eq/年であり、およそ同程度であった。NH_3排出量は、堆肥化方式の場合では処現段階で大きいが、メタン発酵施設利用では散布段階における排出が大きいなど、利用施設により排出量が大きくなる段階が異なった。特に、メタン発酵施設利用での消化液散布では、バンドスプレッド方式やインジェクション方式の散布車両を用いることで、散布時のNH_3排出量を低減できることが示された。

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© 2008 日本家畜管理学会・応用動物行動学会
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