日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌
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温熱環境と泌乳牛の体表温度との関係からみた暑熱環境の評価
林 翰群岡部 健太郎岡本 全弘
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2008 年 44 巻 1 号 p. 21-26

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抄録

暑熱環境下では乳牛の体表面からの熱放散が活発化し、体表温は上昇するはずである。この現象を利用して暑熱環境を評価することが目的である。北海道と台湾南部の泌乳牛延べ347頭の乳房と腹部の体表面温度を二次元放射温度計にて計測した。測定時の牛舎内の気温は9.2〜32℃、相対湿度は35.0〜89.0%の範囲であった。乳牛個体の乳房と腹部の体表温の最高温度をプロットすると、牛舎内気温の上昇またはTHI値の上昇につれて乳房および腹部の体表温の最高温度は高くなり、有意な相関が認められた(p<0.01)。しかし、体表温の分布は気温25℃あるいはTHI値70を境に、それ以上と以下において異なり、それぞれの領域における相関係数は小さくなった。乳房と腹部の体表温の最高温度の個体差は、25℃以上の気温あるいはTHI値70以上の暑熱環境においては、25℃以下あるいはTHI値70以下におけるより小さく、それぞれの分散は有意に異なった(p<0.01)。これは、25℃以上あるいはTHI値70以上の暑熱環境の下では泌乳牛の大部分は体表面からの放熱を高水準に維持する必要があり、体表温は高い値で斉一となることを示し、泌乳牛は上記の境界において軽度の暑熱ストレスに曝されるものと考えられた。

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© 2008 日本家畜管理学会・応用動物行動学会
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