日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌
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動物愛護センター搬入時における子イヌの気質評価 : 性格診断テスト評価値と尿中生理指標濃度との関連性
藤岡 智佳松澤 淑美遠山 千紘植竹 勝治江口 祐輔田中 智夫
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2009 年 45 巻 4 号 p. 145-152

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抄録

長野県動物愛護センターハローアニマル(以下、ハローアニマル)搬入時における子イヌの性格診断テストの評価結果と尿中生理指標との関連性を検討し、子イヌの気質評価の可能性について調べた。長野県内の保健所に保護され、ハローアニマルへ搬入された子イヌ延べ102頭を対象とした。子イヌの搬入時に、性格診断テストを実施した。搬入当日から2日目の13:00〜13:30の間に自然排尿された子イヌの尿を採取し、高速液体クロマトグラフィーを用いて尿中カテコールアミン、セロトニンおよびセロトニン代謝物(5-HIAA)濃度を測定した。性格診断テスト評価値および尿中生理指標濃度にはいずれにも性差は認められなかった。子イヌの週齢間で比較したところ、性格診断テストの項目4「歯茎をさわられた時の抵抗性」および項目5「拘束に対する抵抗性」において、4〜6週齢(項目4:3.8±0.6;項目5:3.9±0.7)と7〜9週齢(項目4:3.2±0.8;項目5:3.4±0.7)との間に有意な差(p<0.05)が認められた。尿中生理指標濃度では、尿中ノルアドレナリン濃度および尿中セロトニン濃度が、それぞれ4〜6週齢(ノルアドレナリン:22.3±22.3ng/mL;セロトニン:93.7±62.0ng/mL)より7〜9週齢(ノルアドレナリン:52.1±40.7ng/mL;セロトニン:177.3±107.5ng/mL)の方が有意(p<0.05)に高かった。また、性格診断テスト評価値と各尿中生理指標濃度との関連を、週齢別にそれぞれみたところ、4〜6週齢時の項目1「社会的積極性」の評価値と尿中ノルアドレナリン濃度に正の相関(r_s=0.590,p<0.05)が認められた。以上の結果から、搬入時における性格診断テスト評価値と尿中生理指標濃度の関連性による子イヌの気質評価は、行動発達に伴う感受性の違いを考慮する必要があるものの、子イヌの気質を測るひとつの手段となる可能性が示唆された。

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© 2009 日本家畜管理学会・応用動物行動学会
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