日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌
Online ISSN : 2424-1776
Print ISSN : 1880-2133
ISSN-L : 1880-2133
繋ぎ牛舎におけるトンネル換気方式が夏季暑熱時の乳牛の生産性に及ぼす影響
長尾 慶和関 奈緒美市瀬 瑞樹
著者情報
ジャーナル フリー

2009 年 45 巻 4 号 p. 153-160

詳細
抄録

夏季の繋ぎ牛舎において、トンネル換気方式を連続的に稼働させることが、乳牛の生産性に及ぼす影響について検討した。試験は宇都宮大学農学部附属農場(栃木県真岡市下籠谷)において、10頭の泌乳牛を用いて行った。毎日15時に牛群を放牧場からスタンチョン式牛舎に収容し、牛舎内をトンネル換気方式(TV)または自然換気(NV)に設定して翌朝9:00まで飼養し、搾乳は収容直後の17:00と翌朝8:30との計2回行った。トンネル換気方式は、風速が毎秒2.3±0.1m/秒になるように設定した。各換気条件は、1週間継続して稼働させた後に変更して、交互に実施し、その間の牛舎環境、牛体、乳生産および疾病の発生状況について検討した。牛舎環境については、牛舎内外の気温と湿度を、牛体については、呼吸数と体温を計測した。乳生産については、乳量、乳脂肪率、乳蛋白率、乳糖率、無脂固形分率および体細胞数を測定した。TV区においては、牛舎内外の気温差がNV区に比べて小さく(P<0.05)、牛舎内気温が牛舎外気温に伴って低下した。NV区およびTV区における朝6:00の供試牛の呼吸数と体温は、それぞれ47.5回/分および38.8回/分、38.8℃および38.4℃とTV区で低かった(P<0.05)。朝の搾乳時の平均乳量が、NV区に切り換え後の1週間で0.4kg減少したのに対して、TV区に切り換え後は0.5kg増加した。乳蛋白率は、NV区に切り換え後の1週間で0.07%低下したのに対して、TV区に切り換え後は0.05%増加した。無脂固形分率は、NV区に切り換え後の1週間で0.13%低下(P<0.05)したのに対して、TV区に切り換え後は0.11%増加(P<0.05)した。食欲不振を示すウシがNV区で観られた。以上より、夏季の繋ぎ牛舎におけるトンネル換気方式の連続的な稼働は、暑熱環境下における乳牛の呼吸数増加や食欲低下を防ぎ、乳中無脂固形分率の向上などの生産性向上効果を有することが明らかとなった。

著者関連情報
© 2009 日本家畜管理学会・応用動物行動学会
前の記事
feedback
Top