日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌
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光照射はハクビシンに対して忌避効果があるのか?
豊田 英人江口 祐輔古谷 益朗植竹 勝治田中 智夫
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2011 年 47 巻 2 号 p. 82-88

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抄録

近年、ハクビシン(Paguma larvata)による様々な被害が日本各地で問題となっている。夜間に発生する鳥獣被害への対策の一つとして、照明装置が広く利用されており、夜行性動物であるハクビシンの被害に対しても応用されている。しかしながら、これまでハクビシンに対する光照射の忌避効果について科学的に裏付けた研究は報告されていない。本研究では、鳥獣被害対策としての光照射の効果を検証するため、3方向(正面、側面、頭上)からの光照射に対する飼育下ハクビシンの光照射時の反応と消灯後の行動変化について調査を行った。光照射は各供試個体に対して、1条件につき1回行い、照射時間は10秒とした。光照射時には、頭上照射条件で1個体が弱い驚愕反応を示したが、各照射条件で無視、接近、探査が観察された。消灯後の行動には照射条件間で変化がなく、空間利用時間の割合は光源に近いエリアで増加した。本研究の結果から、ハクビシンは光照射を忌避せず、むしろ興味を持つ可能性が示唆された。よって、ハクビシン被害対策として照明装置を利用することは、効果的な対策とはいえないことが示された。

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