日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌
Online ISSN : 2424-1776
Print ISSN : 1880-2133
ISSN-L : 1880-2133
ハクビシンは垂直な隙間を登る : 登れる幅および登り方の変化
加瀬 ちひろ江口 祐輔古谷 益朗植竹 勝治田中 智夫
著者情報
ジャーナル フリー

2012 年 48 巻 3 号 p. 95-102

詳細
抄録

ハクビシンによる家屋侵入が問題となっており、侵入防止技術の確立が望まれている。ハクビシンは登しょう能力に優れており樹上環境も利用することから、家屋内では天井裏への移動経路として中空構造をした壁体内を利用している可能性がある。日本家屋の壁は外壁と間仕切り壁の二種類あるが、それぞれ壁体内の幅は様々であり、このような壁の特徴は、ハクビシンの侵入の可否に影響を及ぼす可能性がある。そこで本研究では、2枚の板で形成した垂直な隙間をもつ実験装置を用い、ハクビシンが侵入可能な隙間幅を検討した。実験の結果、ハクビシンは4種類の登り方で背中と四肢で板を押しながら、幅6cmから25cmの垂直な隙間を登った。隙間幅12cm以上では隙間内で体重を支えることが困難になるため、基本となる登り方で侵入に失敗すると、実験装置の他の場所から侵入を試み、体勢や登りはじめの行動を変化させた。登るまでの潜時および報酬までの到達時間は、隙間幅8cm以下および18cm以上で長くなったことから、ハクビシンは幅9〜17cmの隙間を比較的容易に登る可能性が示された。多くの日本家屋の壁体内は幅8〜11cmであることから、ハクビシンは壁内部の垂直な隙間を経路として利用し、家屋内を自在に移動できることが示された。

著者関連情報
© 2012 日本家畜管理学会・応用動物行動学会
次の記事
feedback
Top