日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌
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ハシブトガラス(Corvus macrorhynchos)による異なる顔写真からの同一人物の識別とその記憶保持期間
安江 健佐久間 栄一松澤 安夫
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2013 年 49 巻 2 号 p. 80-90

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抄録
ハシブトガラスによるヒトの個体識別の可否とその記憶保持期間を明らかにする目的で,野外で捕獲した19羽の個体にヒトの顔写真に対する4者択一の弁別試験を実施した.個体識別の可否を調べる試験1では,予め学習させた男性(正刺激)を含む4人の男性顔写真を用い,顔の向きを変えたり帽子,眼鏡などを着用したりした同じ4人の中から特定人物(正刺激)を選択させた.続く試験2では19羽中の16羽を1,3,6ヶ月間の非供試期間にそれぞれ振り分け,各期間後に試験1と同じ4名の正面顔写真からの弁別試験を実施することで,特定人物(正刺激)の顔に対する記憶保持期間を調べた.どちらの試験も最初の試行で正選択した個体数割合が,4者択一で偶然に正解できる確率(25%)よりも二項検定で有意に高い場合に識別が可能と判定した.試験1の結果から,カラスは男性4人の正面顔から特定人物の識別が可能であり,帽子を被ったりサングラスを装着したりした正面顔からでも特定人物を識別できた.一方,顔の向きが変わったり,帽子,サングラスとマスクを同時着用した場合にはカラスは識別できなくなった.続く試験2の結果から,これら一度覚えたヒトの正面顔は半年間覚えている可能性が示唆された.
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© 2013 日本家畜管理学会・応用動物行動学会
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