ストレスとなる刺激を経験することにより、その刺激に対する反応が変化し得ることが知られている。本研究は、ヤギを用い、トラック輸送を繰り返し経験したことにより、輸送に対する反応がどのように変化するかを検討した。6頭の輸送経験のないシバヤギ(1〜3歳、15〜30kg)に対し、約1時間の軽トラックによる輸送を、日を変えて8回行った。輸送中に観察された行動は、伏臥位姿勢を取る、頻繁に体の向きを変える、口吻の端に泡を吹く、であった。輸送中に伏臥位姿勢をほとんど取らなかった1個体を除いた5頭で解析した結果、輸送回数を経ると伏臥位姿勢を取るまでの時間は有意に短くなり(P < 0.01)、また、輸送中に伏臥位姿勢を取った累積時間の割合は有意に長くなった(P < 0.05)。ストレスの指標となる血中コルチゾル濃度は、輸送により有意に増加し(P < 0.01)、輸送の回数を経てもその増加の程度に差はなかった。しかし、輸送が終了し、ヤギを各自の畜舎に戻して60分後の血中コルチゾル濃度は、輸送1回目ではまだ高い値を維持しており、輸送 2回目以降のそれらの値に比べ、有意に高かった(P < 0.05)。これらのことから、ヤギは輸送を経験することにより輸送中に伏臥位姿勢を取るようになることが分かった。一方、輸送を8回経験した後も、ヤギにとって輸送はストレスとなることが分かった。しかし、輸送終了後の回復は、輸送の経験により早まる可能性が示唆された。