抄録
ミヤコカブリダニ(ミヤコ)の個体数は,1990 年以降に日本各地で急激に増加し,関東以西の慣行防除果樹園ではそれまでの優占種であったケナガカブリダニ(ケナガ)と置き換わってきている.一方,北日本への分布の拡大傾向は小さい.このような種の置換と分布拡大の要因を明らかにする一環として,本報告ではミヤコの休眠性の有無と2 種の耐寒性を報告する.
ミヤコは,短日条件と長日条件の産卵前期間が同じであり,休眠性はなかった.2 種間およびケナガの休眠と非休眠個体間の過冷却点(supercooling point)に有意差はなく,−21.9~−23.3°C であった.ケナガ・休眠雌は,−5°C で7 日以上生存した(>50%) が, ミヤコとケナガ・非休眠雌は5 日以内に70~85%が死亡した.このことからミヤコの北進が遅いのは耐寒性がわずかに弱いことも一因であると考えられた.一方,いずれの種においても生残した雌は20°C 長日条件下で2 個体を除いて産卵し,産下卵の大半がふ化した.従って,低温ストレスは産卵数やふ化率への影響が少なく,ミヤコも冬季の低温条件下で生き残ることができる地域では,定着が可能であると考えられた.