日本ダニ学会誌
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総説
環境酸化ストレスに対するハダニおよびカブリダニの酵素的および非酵素的抗酸化防御
刑部 正博
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2024 年 33 巻 2 号 p. 59-84

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抄録

好気性生物では呼吸を通じて,また植物ではさらに光合成によっても活性酸素(ROS)が発生する.ROSは重要なレドックスシグナル伝達分子であるが,太陽光紫外線(UV)や輻射熱などの外的要因による過剰発生が抗酸化酵素による防御システムの制御能力を超えると細胞障害の原因になる.植物はROSのスカベンジャーとして知られるカロテノイド類を合成し,葉緑体のチラコイド膜に配置している.動物は新たにカロテノイドを合成できないため,植物が生産する保護物質に頼っている.最近の研究から太陽光UV-B照射や輻射熱が植物ダニ類の生存に重大な悪影響を及ぼすことが明らかになり,抗酸化防御が彼らの動態や種間関係に直接的に影響を及ぼすことが示唆される.しかしながら,個々の防御システムの持つ役割や効果は不明である.本総説では,抗酸化酵素とカロテノイドに注目しながら,ハダニ類とカブリダニ類が酸化ストレスに対して用いている防御システムについて考察する.

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