抄録
マダニ科Prostriataに属するヤマトマダニにおいて, 交尾から吸血へと続く一連の生殖行動の中で雄性生殖細胞のゆくえとその形態変化を調べた. 交尾前, 雄貯精嚢内の雄性生殖細胞はprospermiaであり, また, 交尾後, 雄性生殖細胞にspermateleosisが起きる時期, 及びそれに伴う微細構造の変化も他のマダニ類と基本的に同様であった. しかしながら, Metastriata群のダニにおいて受精嚢でみられる内精包の破壊が, 本種においては膣頚部で確認された. 内精包の破壊後, 未吸血の雌では, 雄性生殖細胞が総卵管まで移動し, 決して卵管まで上走することなく, そこに少なくとも30日間は貯蔵されることが知られた. 貯蔵されている雄性生殖細胞の微細構造は, 交尾後30日が経過しても交尾後2日目のそれと同じであった. 一方, 交尾後吸血し飽血離脱した雌では, 雄性生殖細胞が離脱後4日目(これは交尾後9日目に相当する)には卵管まで達していることが確認され, 雄性生殖細胞の上走が吸血によって促進されることが示された.