理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-P-36
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ポスター発表
ラットACL損傷モデル急性期におけるリモデリング関連因子の動態
大野 元気国分 貴徳金村 尚彦西川 裕一上原 美南海高柳 清美
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抄録
【はじめに、目的】膝前十字靱帯(以下,ACL)は,損傷頻度が高い靱帯であり,手術療法が第一に選択されている.我々が行った研究では,ラットACL損傷モデルを作製し,蛋白質分解酵素Matrix Metalloproteinase-13(以下,MMP-13)とその阻害酵素Tissue Inhibitor of Metalloproteinase(以下,TIMP-1)のmRNAの発現量を検討した結果,急性期においてmRNA発現量が増加することを報告した.先行研究では,炎症性サイトカインInterleukin-1 β(以下,IL-1 β) は、MMP-13mRNAの発現を誘発し,また靱帯のリモデリング期においてα-smooth muscle actin(以下,α-SMA)mRNA発現量が増加することが報告されている.しかし急性期におけるα-SMAやIL-1 βのmRNAの発現は明らかにされていない.本研究では,ラットACL損傷後急性期における靱帯のリモデリングに関連する因子の動態を明らかにすることを目的とした.【方法】Wistar系雄性ラット24 匹(8 週齢,ACL損傷群12 匹,sham群12 匹)を対象とした.損傷後1 日群,3 日群,5 日群とランダムに分けた.すべてのラットにおいて,餌や給水は自由に摂取させた.損傷群は,膝蓋腱内側縁部の関節包を切開し,マイクロ剪刀を関節内に侵入しACLを切断し,関節包を縫合した.その後,歯科用ドリルを使用して脛骨に骨孔を作製し,骨孔と大腿骨遠位部顆部後面にナイロン糸を通し,大腿骨に対する脛骨前方引き出しを制動するモデルを作成した.各実験期間終了後,各群のラットに対し深麻酔をかけ,ACLを採取した.採取したACLからtotal RNAの抽出を行い,逆転写反応により作成したcDNAを鋳型とし,最後にリモデリング関連因子mRNAプライマーを用い,リアルタイムPCR法にてmRNA 発現量を検討した.プライマーは,MMP,TIMP,IL-1 β,α-SMAを使用した.各mRNA発現量はbeta actin mRNAで正規化し,比較Ct法による比較を行った.損傷群,sham群についてmRNA発現量を比較するために,一元配置分散分析と多重比較検定Turkey法を行った.【倫理的配慮、説明と同意】本実験は,大学動物実験倫理委員会の承認を得て行った.【結果】TIMP-1 はsham群と比較し損傷群において有意に高い発現量を示した(p<0.01).また,損傷後5 日群と比較して,損傷後1 日群で有意に高い発現量を示した(p=0.019).α-SMA,MMP,IL-1 βにおいては全ての群において発現量に有意な差を認めなかった.【考察】本研究では,ACL損傷後急性期のラットACLにおけるリモデリング関連因子のmRNA発現量を検討した.MMP-13 は,細胞外マトリックスの分解をはじめ,細胞表面の蛋白質分解に関与することが報告されている.Blteauらは,ウサギACL切断によるOAモデルを用いてMMP-1,3,13 のmRNAの発現を9 週間経時的に追った結果,MMP-13 は損傷後2 週経過時に発現のピークを迎え,その後減少していくことを報告した.MMPの阻害酵素であるTIMP-1 は,MMPの分解活性を特異的に抑制することが知られている.今回ACL損傷後急性期におけるMMP-13 とTIMP-1 のmRNA発現量を検討した結果,TIMP-1 においては,sham群と比較して損傷群においてmRNA発現量が有意に高値を示したが,MMP-13 においてはsham群,損傷群に有意な差は認められなかった.また,TIMP-1 においては,損傷後5 日群と比較し1 日群において有意に高値を示した. Xie Jらは,ヒトACLと内側側副靱帯を用いて、損傷・非損傷靱帯におけるIL-1 βとMMP,タンパク質リシン-6-オキシダーゼのmRNA発現量を検討したところ,ACL損傷群においてMMP-1,2,3,12 が有意に発現し,IL-1 βがMMPの発現を誘発していることを報告した.本研究の結果では,IL-1 βの発現量においては,sham群,損傷群に有意な差は認められず,IL-1 βがMMP-13 の発現を誘発している可能性が低いことが示唆された.さらにα-SMAは収縮性の筋線維芽細胞であり,損傷を受けた細胞外マトリックスの治癒過程において重要な役割を果たすことで知られている.Weiler らは,ヒツジのACL損傷モデルを作製し,α-SMAの組織学的検討を行ったところ,損傷後6 週経過時点においてα-SMA が有意に発現し,損傷後24 週から104 週にかけてα-SMAの密度や配列が非損傷靱帯に近づいていくことを報告した.本研究では,α-SMAのmRNA発現量に有意な差は認められず,先行研究が示すように,急性期以降の組織の修復過程に関わっていることが示唆された.今後は,関節制動を行わない群を作製することにより,関節制動が損傷靱帯に及ぼす影響を明らかにすることや,長期的に経過を追うことにより,リモデリング関連因子の動態を明らかにする必要があると考える.【理学療法学研究としての意義】損傷靱帯のリモデリングに関連する因子のmRNA発現量に着目し,研究を行った.損傷靱帯のリモデリングに関連する因子の動態を明らかにすることにより,ACL損傷における保存療法の基礎的研究における根拠を明らかにすることができる可能性がある.
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© 2013 日本理学療法士協会
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