抄録
[目的]胃癌における腫瘍組織内CA19-9の免疫組織化学的発現を検討すると同時に,腫瘍生物学的悪性度の一指標であるAgNORs数を測定し,CA19-9染色強度とAgNORs数との相関を検討した.また,臨床病理学的因子別にAgNORs数CA19-9発現率を求め比較検討した.
[対象と方法]胃癌50症例を対象に,ホルマリン固定後のパラフィン切片を用い癌部の薄切片を作製後,Plotonらの方法に準じ銀染色を行い,腫瘍細胞核200個の総AgNORs数を求め,1核当たりのAgNORs数を求めた.同時に抗CA19-9モノクローナル抗体を用い,SAB法により腫瘍組織内を免疫組織化学的染色した.なお,染色強度はG0: negative type, G1: apical or focal cytoplasmic type, G2: diffuse cytoplasmic type, G3: stromal typeの4型に分類した.
[結果](1) 胃癌50例中,早期胃癌,進行胃癌のAgNORs数は4.99±1.33,7.04±2.45であり,進行胃癌が有意に高値であった.また,CA19-9の発現は33例(66.0%)において認められた.
(2) 染色強度別のAgNORs数はG0:5.19±1.63(n=17),G1:5.78±2.26(n=5),G2:6.82±2.23(n=16),G3:7.76±2.80(n=12)であり,G2,G3はG0にくらべ有意に高値であった.
(3) 病理学的因子別にみたAgNORs数は肉眼的進行度別にはstageIVはstageI,IIにくらべ有意に高値であり,腹膜播種性転移陽性例,漿膜浸潤陽性例,リンパ節転移陽性例においてAgNORs数は有意に高値であった.
(4) 病理学的因子とCA19-9染色陽性率との関連は有意な相関は認めなかった.
(5) 胃癌50例のAgNORS数の平均値である6.48をcut off pointとして50症例をAgNORs高値群,低値群に2分し,累積生存率を求めたところ,AgNORs高値群の予後が有意に有効であった.
[考察]胃癌における腫瘍組織内CA19-9発現は古くはAtokinsonらの報告があるものの,いまだその臨床病理学的意義については明らかではない.今回,筆者らの症例では33例(66.0%)にその発現を認めたが,病理学的因子との相関は認めなかった.一方,腫瘍増殖能を反映するAgNORs数については進行癌は早期癌にくらべ有意に高値であり,さきの癌組織内CA19-9発現形式別にみれば,diffuse cytoplasmic type, stromal typeにおいてAgNORs数は高値であり,腫瘍増殖能の強度な細胞は機能的にCA19-9産生が充進している点がうかがえた.胃癌において癌進展度の強度例はAgNORs数は高値でありその相関性が認められた.さらに,AgNORs数高値群は明らかに予後不良であり,胃癌における予後規定因子になりうる可能性が示唆された.