2013 年 31 巻 1 号 p. 17-22
本研究は,リン酸エステル系モノマーを含有するShining Bond Star( SBS,ユーデント)の処理時間の短縮を目的 として行った.SBS の改良品(i-SBS)を使用し,ウシ前歯エナメル質あるいは象牙質に対する24 時間水中浸漬後の 引張接着強さを測定した.i-SBS の塗布後の静置時間を10 あるいは20 秒とした.また,ヒト歯質との接合界面をア ルゴンイオンエッチング後にSEM にて観察した. 各群におけるエナメル質および象牙質に対する引張接着強さは,10 秒静置群では23.5±3.5 MPa および19.5±2.4 MPa,20 秒間静置群では21.0±2.7 MPa および19.7±2.2 MPa であり,4 群間に統計学的有意差は認められなかった(p<0.05).SEM 像では,ヒトエナメル質と象牙質に対して緊密な接合界面が観察された.象牙質との界面にはいわゆる樹脂 含浸層は認められなかった. 以上より,SBS の改良品i-SBS は,SBS の塗布時間を短縮し,エナメル質と象牙質双方に良好に接着することが判 明した.