本研究は,ジルコニアに対して表面処理を施す際に用いるプライマーに含有される10-Methacryloyloxydecly dihydrogen phosphate(以下,MDP)の適正濃度について,MDP の濃度を1〜15%の範囲で調製したプライマーを試製し,接触角の測定,レジンセメントとの引張接着試験,表面処理後の耐水試験により,検討した.
接触角の測定および引張接着試験には,CAD/CAM用ジルコニアブロックを使用し,各試作プライマーで表面処理を行った.また引張接着試験では,コンポジット系およびMethyl methacrylate(以下,MMA)系レジンセメントを用いて引張接着強さを測定し,さらに試験後の接着界面についても評価した.耐水試験では,ジルコニア微小ビーズに対して試作プライマーで表面処理を施し,耐水性の評価を行った.得られた値は,一元配置分散分析および多重比較検定(Tukey法)により比較した.
その結果,ジルコニアに対する表面処理は,2%および3%のMDP含有試作プライマーを使用した場合にレジンセメントとの良好な接着性を示し,高い耐水性が認められた.したがって,ジルコニアに対して表面処理を施す際に使用するプライマーにおけるMDPの適正濃度は,2%もしくは3%が接着性や表面処理後の耐水性に有効であることが示唆された.