2019 年 55 巻 12 号 p. 421-426
ガラス繊維を含有するレゾール硬化型フェノール樹脂と銅箔からなる複合材について,熱硬化過程および冷熱サイクルにおける樹脂/ 銅界面の残留応力変化のその場観察を行った。残留応力はX 線回折法のsin2 Ψ法によりCu( 331) の回折プロファイルを解析し,銅に作用する応力として解析した。硬化処理前の半硬化成形品では銅に圧縮応力が作用した状態であった。これは,複合材成形過程において応力フリー状態の樹脂/ 銅接着界面が形成され,成形後の室温への冷却過程において,相対的に線膨張係数の大きな樹脂の熱収縮量が銅の収縮量より大きくなるため,銅に圧縮応力が作用したとして説明できる。硬化温度への昇温過程では逆の挙動となり,圧縮応力は減少した。180℃の硬化過程においては再び圧縮応力が増加し,樹脂の硬化収縮挙動を残留応力変化として明確に捉えることに成功した。更に,硬化後の複合材を再加熱した結果,硬化過程において銅に作用していた熱時の圧縮応力が緩和した。樹脂の硬化過程において架橋構造に歪みが生じ,この歪の緩和が応力緩和をもたらしたと考えられる。