日本接着学会誌
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研究論文
大気圧プラズマ処理によるポリプロピレンの表面改質
市村 進
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2019 年 55 巻 8 号 p. 287-295

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抄録

近年,自動車の軽量化が進んでいる。軽量化の手法として,金属部品を樹脂部品に置き換えることが成されている。樹脂部品の場合は,接着剤を利用して接着する場合が多い。しかし,多くの樹脂は難接着であり,何らかの方法で表面改質をする必要がある。プライマーを用い,難接着を回避する傾向にあったが,環境規制により,代替技術のニーズが高まっている。筆者は,安全性・量産性の観点から,大気圧プラズマ処理に注目した。一方で,大気圧プラズマ処理を用いて薄膜形成できることが報告されている。ポリプロピレン表面の大気圧プラズマ処理により,ヒドロキシ基などの極性基が導入できることを,水接触角およびXPS 分析により,明らかとした。照射距離が短くなると,酸素由来の官能基の導入量が増加した。オゾン,酸素ラジカル( 原子状酸素) がポリプロピレンの側鎖の水素,メチル基と反応し,ヒドロキシ基などの極性基に置換が進行し導入された官能基によりポリプロピレン表面が分極することを実験的に示した。また,大気圧プラズマ処理をした表面に,際立ったダメージがないことをSEM により示した。未処理のポリプロピレン( 接合強度 0.60 MPa) と比較し,最適に大気圧プラズマ処理を施した試料( 接合強度 8.05 MPa) では,接合強度が13 倍となった。水溶液を併用した,HMDS 処理においては,ポリプロピレンの極表面に極めてSiO2 に近い物質を含む層が形成されている可能性が高いことを示した。その表面は,薄膜形成により,硬度が上昇することを示した。表面親水化・接合強度向上以外の機能を付与できる可能性を示した。

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© 2019 一般社団法人 日本接着学会
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