2022 年 58 巻 10 号 p. 342-352
第二世代アクリル系接着剤( SGA)は,破壊試験時に凝集破壊を示すため結合力モデルなどの応力解析への適合性が高い。解析条件をより適切に設定していくためには,材料の破壊過程の正確な把握が重要である。本研究では,スカーフ角度0°,30°,60°,90°を対象にして強度試験途中のアコースティックエミッション(AE)およびひずみ分布測定,破断面の走査型電子顕微鏡(SEM)での観察を実施した。微視観察の結果,すべてのスカーフ角度において,まずアクリルリッチ相に接着面と平行にクラックが発生し,その後エラストマーリッチ相へクラックが進展することがわかった。スカーフ角度が大きくなるにつれてエラストマーリッチ相のせん断による塑性変形が大きくなった。高いエネルギーのAEシグナルの発生はスカーフ角度0°,30°で多く,60°,90°で少なかったが,アクリルリッチ相のクラックに対応することが示唆された。スカーフ角度30°と60°の間で破面,AE 発生状況,ひずみ分布が大きく変化し,破壊モードが引張支配型からせん断支配型へ変化することがわかった。