2023 年 59 巻 6 号 p. 210-218
光を刺激として材料の形状や硬さなどが変化する光加工性高分子材料は,精密加工や遠距離からの加工が可能であるため,医療・電子・プロセス工学など多岐にわたる分野で応用されている。その応答性の鍵は,光によって分解する化学結合の設計にある。近年,高分子材料に導入可能な様々な光応答性ユニットが開発されており,より低エネルギーな波長の光を用いた光加工性や,迅速な光加工性を示す材料,可逆的な光加工性を示す材料など,多種多様な光加工材料が実現している。また近年では特に,光ともう一つの刺激とを組み合わせることで,光分解性に緩急を持たせた材料や,光分解性の切替が可能な材料など,より高度な光加工を実現する材料も開発されてきた。本総説では,三次元ネットワーク構造を持つ高分子材料の化学的切断を鍵として,光応答性ユニットの設計によって実現する新しい光加工材料について,筆者らの最近の研究も交えながら紹介する。