2024 年 60 巻 5 号 p. 115-121
歯科治療では歯質表面に治療用器具を接着剤で固定することで治療が行われており,歯科における接着は歯科治療の基盤となる技術である。一方,矯正治療などでは治療用器具の接着は一時的であり,不要となった時点で歯質表面から力学的に脱着させる。任意のタイミングで簡便かつ非侵襲的に歯質表面から治療用器具を脱着させる技術を確立するためには,易解体性の歯科用接着剤の開発が必要である。ポリロタキサンは直鎖状高分子両末端にかさ高い封鎖基を結合することで多数の環状分子を機械的に束縛した構造の超分子である。物理的,化学的な刺激により封鎖基が脱離する設計をポリロタキサンに施すと,封鎖基の脱離に伴って直ちに超分子構造が解離し環状分子が放出される。本稿では,光照射によって分解するポリロタキサンを架橋剤として利用した易解体性歯科用接着剤の開発について概説する。