抄録
近年、半導体デバイスの高集積・微細化に伴い、高エネルギー宇宙線中性子による半導体デバイスの誤動作(ソフトエラー)が危惧されている。ソフトエラーの微視的発生機構は、中性子とシリコン原子核との核反応により発生した電荷による情報反転現象(シングルイベントアップアップセット:SEU)に起因している。これまで当研究グループではSEU現象を解析するため、宇宙線中性子とシリコン原子核との核反応データベースの作成を主に行ってきた。核反応データ作成には、中性子の入射エネルギーに応じてJENDLE-3.3(20MeV以下)、LA150(20_から_150MeV)、QMD計算(150MeV_から_3GeV)を用いている。そこで本研究では、核反応発生後の二次イオンによる初期電荷付与計算をより現実的な体系で行うため、簡易球体系から直方体体系へ拡張する。また、次世代半導体デバイスの高集積・微細化により、エネルギー付与の小さい水素同位体イオン(p,d,t)の寄与も無視できなくなることが予想されるため、これらのイオンを含めた全生成二次イオンの核反応データベースへ拡張する。次に、SEUに与える生成二次イオン影響(入射エネルギー、臨界電荷量、放出角度依存性)を解析し、SEU研究で重要となる核反応過程を調査する。