抄録
地層中における放射性核種の移行パラメータとしては、例えばKd、実効拡散係数、マトリックス深さなどが挙げられるが、報告者らはこれらを整合性をもって同時に取得するツールとして、「マイクロモックアップ法」を開発している1)。本法は非破砕の岩盤サンプルの表面に形成した微細流路に、任意の波形のトレーサ溶液を通液し、出口でのトレーサ濃度変化を計測する手法であり、固液比が大きいため、溶液から岩盤内部に拡散した核種が少量であってもトレーサの大きな濃度変化が生じ、固相内における拡散、収着が検出可能である特徴を持つ。今回は岩盤内部におけるマトリックス拡散に起因するトレーサ濃度変化を、拡散方程式に基づいて評価し、マイクロモックアップ法により計測可能である実効拡散係数の範囲を求めた。ついで非吸着性の3H溶液を用いた通液試験結果および岩内部における3Hの濃度分布の実測値との照合により、3Hの実効拡散係数を測定した。