抄録
我が国の原子力発電施設は、主として、原子炉等規制法及び電気事業法によって規制されている。両法律は、規制の客体である事業や社会の変遷にあわせ、幾度もの改正が行われてきた。また、行政訴訟等の判決や法曹界の有識者などによる議論などを経て、両法律の解釈等は洗練されてきた。
しかし一方、訴訟上の主張や法の解釈論にとらわれ、実務上において技術の発展に伴う柔軟な対応ができないという問題も生じている。また、原子炉等規制法の制定から抜本的な改正はなく、追加的に必要な改正を行ってきたため、運用が歪められ規制側や被規制者に負担がかかっている面があることも否定できない。
本発表では、発電用原子炉の規制について、原子炉等規制法と電気事業法の2重規制等につい述べた後、法の手続きの順に従い、その課題と考察を行う。具体的には、設置許可段階における審査基準の法定化、技術基準による段階的安全規制の統制、設置許可の後段規制への拘束性、原子力安全委員会の設置許可のダブルチェックの必要性の再検討、クロスチェックの有効性の検討、工事計画認可段階における審査の構造強度への偏り、設計変更の工認への折り込みの困難性、燃料体検査及び使用前・供用開始後の検査の諸課題、軽微な事象の取扱いの順に課題を整理し、現段階で解決の方向を見出し得る課題については在るべき姿を考察することを試みる。もとより、現実には解決が困難な問題もあり、本論における考察は解決へ向けての提言的意味合いを持つものも含まれる。