抄録
筆者らは空気中ラドン濃度測定用大型シンチレーションセルを開発し報告した。その後1年余りにわたり2組の測定系による大気中ラドン濃度のモニタリングを行いその有用性を確認した。これまでに得られたデータを整理し、サンプリング位置による濃度差、気象条件によるラドン濃度の変化など変動要因を検討し、更なるデータの収集を行っている。
現モニタリング地点の西方には、国府津‐松田断層と呼ばれる30年以内に地震が発生する確率の最も高いグループに属する断層帯がある。
本震発生に先立ち断層の一部に破断が起き地下に蓄積しているラドンが大気中に放出されラドン濃度が上昇する可能性が高い。したがって、比較的地表に近い断層により起こる直下型地震については、大気中ラドン濃度の精密な測定による事前予測の可能性がある。
なお、こうした方法による事前予知を可能にするためには、適切な観測点の選定と地震の前兆現象以外の要因によるラドン濃度の変動に対する十分なデータの蓄積と分析手法の整備が不可欠と考える。