抄録
中性子偏極ミラーを実際の偏極中性子散乱実験で利用する際には、低い外部磁場で高い偏極性能が得られることが重要である。Fe/Si、Fe/Ge等の組み合わせの多層膜が中性子偏極ミラーとしてよく用いられるが、Fe/Ge多層膜の界面に薄いSi層を積層させて得られるFe/Si/Ge/Si多層膜では中性子偏極性能を得る為に必要な外部磁場が低く抑えられることが知られている。このメカニズムを解明する為にFe/Si、Fe/Ge、Fe/Si/Ge/Si多層膜に対して中性子偏極反射率、磁化、応力測定を行った。その結果、中性子偏極性能を得る為に必要な外部磁場の大きさは膜応力の大きさに依存し、成膜において膜応力を減少させることの重要性が示された。さらに、これらの多層膜に対してXPS測定を行った結果、Fe/Si/Ge/Si多層膜ではSiがGe層全体に分布していることがわかった。SiとGeとは比率によらず固溶体を形成することが知られており、これが膜応力の蓄積を妨げているのではないかと考えられる。