抄録
原子力プラントの経年評価や健全性確保のためには、構造材料の材料損傷(熱時効効果及び照射損傷等)を非破壊で把握し、管理することが望ましい。我々はこれまでに、非破壊測定可能な磁気特性が、微細組織や局所的な化学組成等の変化に敏感であることに着目して、着磁後に材料表面から漏えいする磁束密度(漏えい磁束密度)による材料損傷評価の可能性を示した。しかし、従来の着磁方法では、試験片全体を着磁するために試験片端部の加工の影響が現れる等の課題があった。
そこで本研究では、より定量的な比較評価が可能となる「局所的に着磁する方法」を、高速実験炉「常陽」で照射した高速炉候補材料であるオーステナイト系ステンレス鋼(SUS304、316FR)試験片に初めて適用し、照射下での材料磁気特性変化の検知の可能性を確認した。具体的には、温度または弾き出し損傷量とともに、漏えい磁束密度が変化することを確認した。