抄録
シミュレーションを主体とした原子炉熱設計を可能にするために開発を行っている三次元詳細沸騰二相流解析手法では、沸騰現象を正確に予測できる機構論的な沸騰モデルが必要である。しかし、時間的及び空間的に変化する伝熱面温度/熱流束を高分解能で計測することができないため、沸沸騰熱伝達機構が未解明であった。そこで、原子力機構は、特殊温度センサーを伝熱面表面の極近傍の伝熱体内部に高密度に配置する技術を開発し、これと逆問題解析による伝熱面表面温度評価手法を組み合わせることで、伝熱面表面温度分布の高密度かつ高速度での計測を可能とすることを開発した。これまでに、確立した伝熱面温度・熱流束同時計測技術を用いて、大気圧プール沸騰実験に適用し、沸騰気泡の生成、成長や離脱過程における伝熱面温度と熱流束を高分解能で同時計測することできた。本研究は、さらに大きな気泡の形成を目指して、大気圧より低い圧力条件でプール沸騰実験を実施した。沸騰気泡の位置を固定するために、沸騰試験体の表面を鏡面処理し、その中心に気泡を発生させるための気泡核を設けた。気泡核中心から、1mm以内に最大6点、計26点の温度センサーを伝熱面表面から1.4μmの深さに配置した。取得した温度データを用いて、逆問題解析を実施し、沸騰直下の伝熱面温度及び熱流束に加え、高速度ビデオカメラにより沸騰気泡形状の可視化画像を取得した