抄録
TOFD法は,高精度での割れの深さ測定が可能であるが,原子力発電所の原子炉容器の管台-セーフエンド異材継手部など,超音波の減衰が大きい部材への適用は困難である. そこで,管台セーフエンド異材継手溶接部のSCC深さを測定するために,フェーズドアレイ探触子を用いた非対称超音波ビームによるTOFD探傷法 (以下,フェーズドアレイ非対称ビームTOFD法)をあらたに開発した.この手法は,①送信と受信の探触子に2Dマトリクスアレイ探触子を使用すること,②送信と受信の超音波ビームを,屈折角および伝播経路について非対称とすること,③異なる探傷条件(屈折角,焦点深さ)の結果を重ね合わせること(以下,マルチアングル合成法),を従来の手法にはない特徴とする. 原子炉容器管台等の異材継手部を模擬したNi基合金溶接部平板試験体に付与したSCCを開口面側から深さ測定した.切断開放により調査した割れ深さによく一致していたことから,本手法の有効性を確認した.