抄録
近年、重イオン核反応を用いた原子核実験や放射線治療が注目されている。これらの場の線量・線源評価には、重イオン核反応に対する量子・分子動力学モデル(JQMD)と蒸発モデル(GEM,DRES等)を用いた粒子・重イオン輸送計算コードPHITS の使用が考えられる。従来のJQMD+蒸発モデルの適応範囲は核子あたり100 MeV 程度であり、低エネルギー領域での二重微分断面積の系統的な再現性については実験データの不足から十分検証されていない。また、物理的な観点からは、融合反応からの放出粒子のJQMDによる運動エネルギーの時間変化を見ることで、モデルの最適なパラメータが見つかる可能性がある。
本研究では薄膜のベリリウム、炭素、鉄ターゲットを用いて、核子あたり13MeVのNe-20入射核反応により生成する荷電粒子(水素同位体からアルゴンまで)のエネルギー・角度の二重微分断面積測定を行い、JQMDコードとの比較を行った。