抄録
遷移前後のZr合金酸化膜中における水素の拡散挙動を調べるため、GNF-Zironを水蒸気腐食し、続いて重水腐食することによって表面に重水素を含む酸化膜をもつ試料を作成した。遷移前の酸化膜中の重水素濃度分布を核反応法によって非破壊的に測定すると、表面付近では平坦であり、金属との界面付近では単調に減少していた。試料を真空中で加熱し、濃度分布の時間変化を観察したところ、表面付近の層では水素が拡散しやすく、金属との界面付近の層では水素が拡散しにくい二層構造になっていることが分かった。遷移直後と思われる酸化膜中の重水素を同じ方法で分析したところ、遷移前と同じような二層構造をしていることが分かった。濃度分布の変化は一次元の拡散方程式によってよく再現できたことから、遷移前も遷移後も水素は拡散によって移動していると思われる。