抄録
高温ガス炉の炉心および炉心構造材料である黒鉛において、照射下寸法変化が材料の寿命決定因子となるため、これまで精力的に工学データの取得がなされてきた。しかしながら、寸法変化メカニズムに関する理解は十分ではなく、これが近年活発に開発されている多様な原子力級黒鉛の寸法変化予測が容易でない一因となっている。本研究は、各結晶軸について、マクロな寸法変化の照射条件依存を系統的に調査し、その要因となるミクロ組織レベルでの寸法変化メカニズムを明らかにすることを目的としている。ラマンスペクトルは格子の乱れなどの結晶の構造や結合状態によって変化する。前回はイオン照射により黒鉛の各結晶軸の寸法変化を測定する手法を開発し、寸法変化量の照射温度依存に関して報告した。今回は照射によるラマンスペクトル変化が顕著であることに注目し、寸法変化量との相関およびその温度依存性に関して報告する。