抄録
タングステン試料にタングステンイオンを照射し、その試料を重水素プラズマに曝しながら、試料内部の重水素濃度を核反応法により測定した。次に同じ試料にヘリウムイオンを追加して照射し、同様の測定を行った。タングステンイオンのエネルギーは1.5と4.8MeV、損傷量は平均値で0.6~17dpa、ヘリウムイオンはそれぞれ0.4と0.8MeV、0.5dpaである。タングステンイオン照射試料では、損傷量の増加に伴い重水素濃度は増加した。複合イオン照射試料では、タングステンイオンとヘリウムイオンによる深さ方向の損傷領域が一致している場合、ヘリウムイオンの影響はほとんど見られなかった。一方、損傷領域が一致していない場合、ヘリウムイオン照射によって多量の重水素が捕捉され、重水素濃度は大きく増加した。