抄録
服装文化の世界的傾向をみると,洋服が広く行き渡る一方,各地の民族衣装が廃れているという構図がある。しかし,西アフリカを中心とした地域の女性の間では,いずれとも異なる衣装が普及する。19世紀ヨーロッパで最初に製造され,その後西アフリカにもたらされたプリント布「パーニュ」を用い,衣服に仕立てたものである。アフリカの「伝統」衣装ではない,しかし地域に特有の衣服が,女性たちの間で日常着,晴れ着として用いられている。本研究は,ブルキナファソ第二の都市ボボジュラソの事例から,現地でのパーニュを用いた衣服の着用を明らかにし,独特の衣服が普及する背景を考察した。
調査地で観察されたパーニュを用いた衣服は形がきわめて多様であり,さらに流行が継続的に移り変わることが明らかになった。このように形が絶え間なく変化する特質が,世界的に普及する洋服と共通しており,パーニュを用いた衣服が地域で支持される背景として考えられた。